49皿目 解答用紙

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「知らなかったと思いますけどー、28日の5時半に美里さん達が広場から出て行った後、裕斗も広場を出てるんです……家に帰ったんじゃなくて、『ふぁみれす』って店に住み着いてる猫にエサをやりに行ってたらしいんですけどー……裕斗はこの村に来てから毎日、朝の7時と夕方の6時に必ずエサをやりにいってたんです。だからあの日も、一人でエサをやりに行ってた」 「28日の6時に裕斗が店に行ってたってのは、店の主人の菊乃さんが証言してるし」  由貴の言葉の後に竜はポケットに入っていた黒い携帯を取り出すと、電話で確認したから、と言って閉じていた携帯を開いてみせた。竜は携帯を握ると、視線を手元へと向けた。 「菊乃さんは、裕斗は28日以降店に来てないって言ってる。毎日欠かさずに来ていた裕斗が29日の朝には来なかった。29日、誰も裕斗の姿を見ていない……言いたいこと、わかりますよね?」  竜は業とらしく丁寧な言葉使いで問いかけた。 「ちょっと待てよ。それなら裕斗くんはいつ、一体どうやって殺されたっていうんだ?」  由貴と竜の話を聞いて難しい表情を浮かべていた拓郎が竜と由貴にそう問いかけると、ステージに腰をかけていた由貴が立ち上がって拓郎の方へと視線を向けた。 「裕斗が、殺されたのはおそらく、ほぼ卓也と同時刻っすよ」 「同時刻……? どういうことだ?」 「裕斗は、エサをやった後家に帰ったんです。あ、ちなみにこれも菊乃ちゃんに確認とってますから。それで、おそらく裕斗は家に帰ってる途中に通る森の中で美里さんが卓也を殺しているところを見てしまった。卓也が見つかったあの場所は裕斗の家の近くですから……卓也や誠太は計画的だったとして、きっと裕斗は予想外の出来事だったんだと思います」  由貴は言い終わり、右手に持っていたグラスに口をつけて残りの烏龍茶を一気に飲み干すと、空になったグラスを近くのテーブルに置いた。右手の甲で濡れた口を拭うと、由貴は話を続けた。竜はじっとその様子を見ている。
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