4384人が本棚に入れています
本棚に追加
外は真っ青な空が広がっている。
蝉の声が辺りに響く。
竜と由貴は玄関を出た後、照りつける太陽の日差しに目を細めた。
「あっつー……」
「まさに夏って感じだよな」
由貴は赤色のティシャツの首元を掴んで動かした。由貴はそうして扇いでいるつもりであったが、その程度の微弱な風では真昼の太陽の暑さには勝つことができず、その努力も徒労に終わっていた。
玄関から出て、最初来たときに見つけた二台の自転車の前に二人は立つと、どう見てもぼろぼろに錆びた自転車を見下ろした。
「なあ……ほんとにこれ乗れんのかよ」
竜は由貴に視線を向けると、由貴は苦笑いを零した。
隆子が言うにはまだ使えるらしいが、その自転車は見た目からして乗ってよいものではなかった。竜はしゃがみこんで、自転車のタイヤに手を伸ばす。
「こっちは完全に空気抜けてる。そっちは大丈夫っぽいけどな」
「空気入れもねえし、仕方ねえな。そっち使うか」
由貴は緑色の自転車に近づいてハンドルを握ると、壁にたてかけるように置かれていた自転車を起した。
竜は立ち上がって、由貴の側にたつとポケットに手を入れたまま不思議そうな顔をした。
「一台って、どっちが乗るんだよ」
「どっちって……二人乗りに決まってんじゃん!」
何言ってんだよー!と笑う由貴に竜は心底いやそうな顔をした。
「ちょっとー! その顔はねえだろ! さすがの由貴ちゃんも傷つくよ!?」
「お前とニケツとか無理。ぜってえ無理」
「なんでだよ! どっからその確信がくるんだよ!?」
最初のコメントを投稿しよう!