49皿目 解答用紙

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「……焦った美里さんは口封じに裕斗を殺してしまった。そのまま卓也と同じ場所に置いておくのは、明らかに不自然。卓也と裕斗が一緒にいることなんてほとんどなかったし……それで焦った美里さんはどこかへ隠すために、まず裕斗を車に乗せて運んで家に戻った。その後、俺と竜が道に迷ってここに来て、美里さんの車で家まで送ってもらった…………美里さん……あのとき、あの車の中に……裕斗も乗ってたんですよね?」  由貴はそこで始めて今まで笑うか真剣な表情をしていた顔を、くしゃりと歪めた。問いかけられた美里は目を合わさず、ただ俯いて黙り込んでいた。それ以上何も言えなくなった由貴に代わって、黙っていた竜が口を開いた。 「プレハブの鍵は祭りの準備日、当日、その間ずっと閉まっていた。ただし、二度だけ鍵が開いたときがあった。28日の夜と29日の夜……29日の夜は何人かで鍵を開け閉めしていたから、裕斗を中に入れることは無理。残るは28日の夜」 「28日の夜は、僕が鍵を閉めたんだけど……そのとき、美里さんを見た覚えはないし……あの夜も無理だったんじゃないかな」  竜の話を聞いていた清治が眉を顰めながら話した。竜は視線を清治の方へ向けた。 「清治さん、忘れてませんか。たった一度、あのプレハブ倉庫の前に、しかも鍵が開いてる状態で、一人でいることができた時間があるんです」 「鍵が開いてる時……」  清治は竜の話を聞くと、口元に手を当てて黙り込んだ後、何かを思い出したかのように目を見開いた。竜はその様子を見た後、視線を俯いて黙っている美里へと向けた。
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