49皿目 解答用紙

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「あんたにしか無理なんだよ……本当のこと言えよ」 「美里……どうなんだ……違うよな? お前じゃないよな?」  竜が言葉を発した後、美里の前に座っていた省吾が腰を上げて身を乗り出すと、美里の肩に手を置いて身体を揺らしながら問いかけた。その表情は強張り、声が震えていた。  宴会場を沈黙が包んだ。  その場にいた者全員が、俯いたまま黙っている美里に視線を集中させていた。しばらく重苦しい空気がその場を漂った後、黙り込んでいた美里が口を開いた。 「……そうよ……あたしがやったの……」 「美里……」  自分の犯行を認めた美里に省吾は力なく手を下ろすと、愕然とした表情で床に腰を下ろした。竜はその言葉に視線を下へ向け、由貴は目を伏せて下唇を噛んでいた。 「なんで、そんなこと……」  省吾はいまだに俯いたままの美里を見ながら、震える声でそう問いかけた。美里はエプロンを握っていた手に力を込めると、鼻を一度すすった後、話し始めた。 「許せなかったのよ、あの子達が……」 「…………」 「……去年、同じ時期に葵と俊哉くんが、死んで……辛くて辛くて仕方がなかった。村の皆には『神隠し』だから仕方ない、狐様に悪いことをした葵が悪かったんだって言われたわ……でも、どうしてもあたしは信じられなかった。あんなに優しくていい子だった葵と俊哉くんが神社に悪戯をするなんて……葵は生まれたときから、少し発育が悪くて上手く歩けない子だったから、あんな森の奥に行っていたことも信じられなかった……」  ぽつりぽつり、と話す美里の話にその場にいた全員が神妙な面持ちで耳を傾けていた。
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