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「卓也くんみっけー!」
「……へ?」
「……は?」
二人の視線の先には、草むらから顔を出した一人の少年が居た。
少年は由貴と竜をみると、きょとんとした顔をして、大きく開いた目でぱちぱちと瞬きをした。
「あれ? お兄ちゃん達だれ?」
「いや、誰って……俺らからしたら君が誰って感じなんだけど」
由貴の言葉に少年は草むらから出てくると、由貴と竜の側まで近づいた。
「僕は、壱也。お兄ちゃんたちは? 村で見たことないけど……」
10歳ほどの壱也という少年は、少し日に焼けた肌で大きな目で二人を見上げた。
由貴はしゃがみこんで少年と目をあわせる。竜は立ったままポケットに手を入れて由貴と壱也を見下ろしていた。
「俺は由貴、んでこっちで怖い顔してんのが竜な。俺らは東京からこの村に遊びに来てんだ。斎藤って家に泊まってんだけど」
「斎藤って、せいじ兄ちゃんのとこ?」
「そうそう、そこ」
人口が少ないためか、清治のことを知っていた壱也に由貴はにんまりと笑いかけると、壱也もその笑顔ににっこりと笑い返した。
由貴は立ち上がると、腰に手を当てて壱也を見下ろした。
「で、壱也はこんなとこで何やってんの?」
由貴は辺りを見渡しながら言う。ここは子どもが遊ぶような場所ではない。
「かくれんぼだよ。友達さがしてるんだけど、なかなか見つからないんだ」
あと一人なんだけどなあ、と言いながら壱也はきょろきょろと辺りを見渡した。
薄暗いこの場所は、由貴や竜にとってはどこか気味の悪い場所であるが、子ども達からすればかっこうの遊び場所なのだろう。
「いっちゃーん、卓也くんみつかったー?」
すると、後ろから再びガサガサと音が聞こえ、今度は三人の子どもが出てきた。
由貴は続々と出てくる子どもに驚きつつもおもしろそうな顔をしていたが、竜は眉をひそめて心底面倒くさそうな顔をしていた。
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