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三人の子どもは壱也の側によってくると由貴と竜をちらりと見上げた。
「いっちゃん、このお兄ちゃんたち誰?」
「由貴兄ちゃんと竜兄ちゃん、せいじ兄ちゃんのとこのお客さんだって」
「そうなんだ」
三人の子どもは再び由貴と竜を見上げると、にこっと笑い、坊主頭の少年は隆史、おかっぱの少女は紀美子、髪を二つに結んでいる少女は亜矢と名乗った。
子ども達の話によると、あと二人一緒にここでかくれんぼをしていたらしい。しかし、先に見つかった誠太という少年はいつの間にかいなくなり、もう一人の卓也という少年は四人で探してもまったく見つからないのだという。
「それってやばくねえ? もしかしたら迷ってんのかもしんねえじゃん」
由貴は眉をひそめてそう言うと竜を見た。竜はその視線をうけて、辺りを見渡した後、そうだな、と頷いた。
木が鬱蒼と茂り、小さな子どもなら迷いこんでしまっても仕方がない。もしかしたらどこかで怪我でもしているかもしれない。
由貴と竜が深刻な顔をしたが、それとは対照的に子ども達はあっけらかんとしていた。
「きっと卓也くんと誠太くん、またさきに帰っちゃったんだよ」
「だねー」
あたしたちもいこっか、と言っている子ども達に由貴と竜は唖然とした。
「え、いいのかよ? 探さなくても」
「うん。よく二人とも遊んでるとちゅうでかえっちゃうんだ」
「そうだ! お兄ちゃんたちもいっしょに広場にいこう! おまつりのじゅんびしてるんだ」
すっかり友達のことを忘れたように由貴と竜の腕を掴んで引っ張る四人の子どもに由貴と竜は困ったように顔を見合わせた。
結局、子どもたちに促されるままに由貴はまるで保父さんにでもなったかのように、四人の子どもを連れて、来た道を戻っていった。
その後ろを自転車を押しながらゆっくりと歩いていた竜は、足をとめて、ふと後ろを振り返った。
後ろに見えるのは木々に覆われた古びた鳥居。
蝉の鳴き声が辺りに響き、ザワザワと風が葉を揺らしていた。
「竜ー、早く来ないと置いてっちゃうよー」
「……今行く」
竜は由貴に返事をすると、遠くで待っている由貴達のほうへと足を速めた。
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