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「おとーさーん!」
「おー、壱也か」
由貴と竜は子ども達に連れられて、村の広場へと向かった。
広場の中央には昨日、清治の車から見た『やぐら』が建っていた。由貴と竜はやぐらの前に立ち、上を見上げていた。
「いやー、いい仕事してますねえ」
何十本という木材が組み合わさり、高くそびえ立つやぐらは、近くで見るとさらに迫力があった。
由貴はまるで新築の家を見に来たお父さんのように腕を組んで、じろじろとやぐらを見上げながらその周りを歩いていた。
竜はそんな由貴を呆れたような顔で見つつ、ポケットに手を入れて気だるげに立っていた。
壱也がやぐらの近くにいる男達に駆け寄ると、その中にいた壱也の父親である木下拓郎が息子の声に振り返った。
拓郎は駆け寄ってきた壱也の頭を豪快に撫でた後、後ろにいる三人の子ども達を見た。
「壱也、母さんが心配してたぞ。どこ行ってたんだ?」
「隆史たちと神社でかくれんぼしてたんだ」
「神社だと? お前、あそこで遊んじゃ駄目だって何度も言っただろ!」
「……ごめんなさい」
拓郎が壱也の返事に突然声を張り上げると、後ろにいた三人の子ども達もびくりと肩を揺らして、下を向いていた。
由貴と竜もその声に、やぐらから壱也達の方へと視線を移した。
「あそこはお前らが遊んでいい場所じゃないんだぞ。いいか、悪さでもしてみろ。お前たちも狐様に攫われるぞ」
拓郎の言葉に壱也達は怯えたような顔をすると、もう一度「ごめんなさい」と謝った。
由貴と竜は拓郎の『狐様に攫われるぞ』という言葉に不思議そうな顔をして、首をかしげた。
由貴は近くで壱也達のやり取りを見ている男に声をかけた。
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