1皿目 英語で言えばサマーヴァケイション

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 由貴は竜がまた、自分から視線を雑誌に向けてしまったのに気付くと、ちょっとー!と竜の雑誌を取り上げた。 「アタシと雑誌どっちが大事なの!?」 「彼女か」  意外にノリがいい竜は律儀に由貴につっこむと、由貴の手から雑誌を取り返した。  これ以上抵抗しても、余計に絡んでくるだけだと諦めたのか、竜は雑誌を閉じてテーブルの端に置くと、ソファにもたれて、心底めんどくさそうに由貴を見た。 「ったく……で、夏休みがなんなんだよ?」 「なーんだ、そっけない態度取りながら、竜ちんも実は気になってしょうがなかったんでしょー?」 「ぶっとばされてえか」 「ごめんなさい」  竜の鋭い視線に由貴は即座に謝った。  由貴は恐る恐る顔を上げて、竜が怒っていないことを確認すると、身体を起してソファにもたれた。  テーブルにあるグラスの手を伸ばすと、ストローをくわえて、残りのメロンソーダを飲み干した。  コトン、と由貴はグラスをテーブルに置く。 「実はさ、俺のばあちゃんが、夏休みに田舎に遊びに来ないかって言っててさ」 「ああ、あの駄菓子屋の?」 「あー、そっちじゃなくて、親父の方のばあちゃんなんだけど」  竜の言葉に由貴は先ほどまでのふざけた様子ではなく、苦笑いしながら答えた。  どこか不自然な笑い方に竜は、不審げに思いつつ口を開いた。 「ふうん……それがどうかしたのかよ? 遊びに来いっつってんなら行けばいいんじゃねえの?」  なんの問題があるんだよ、と竜が言うと、由貴はグラスに刺さっているストローを指でいじりながら、どこか言いにくそうな顔をした。  竜はいつもと違う由貴の様子を眺めて、次の由貴の言葉を待っていた。  由貴はしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと顔を上げた。
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