4384人が本棚に入れています
本棚に追加
由貴は竜がまた、自分から視線を雑誌に向けてしまったのに気付くと、ちょっとー!と竜の雑誌を取り上げた。
「アタシと雑誌どっちが大事なの!?」
「彼女か」
意外にノリがいい竜は律儀に由貴につっこむと、由貴の手から雑誌を取り返した。
これ以上抵抗しても、余計に絡んでくるだけだと諦めたのか、竜は雑誌を閉じてテーブルの端に置くと、ソファにもたれて、心底めんどくさそうに由貴を見た。
「ったく……で、夏休みがなんなんだよ?」
「なーんだ、そっけない態度取りながら、竜ちんも実は気になってしょうがなかったんでしょー?」
「ぶっとばされてえか」
「ごめんなさい」
竜の鋭い視線に由貴は即座に謝った。
由貴は恐る恐る顔を上げて、竜が怒っていないことを確認すると、身体を起してソファにもたれた。
テーブルにあるグラスの手を伸ばすと、ストローをくわえて、残りのメロンソーダを飲み干した。
コトン、と由貴はグラスをテーブルに置く。
「実はさ、俺のばあちゃんが、夏休みに田舎に遊びに来ないかって言っててさ」
「ああ、あの駄菓子屋の?」
「あー、そっちじゃなくて、親父の方のばあちゃんなんだけど」
竜の言葉に由貴は先ほどまでのふざけた様子ではなく、苦笑いしながら答えた。
どこか不自然な笑い方に竜は、不審げに思いつつ口を開いた。
「ふうん……それがどうかしたのかよ? 遊びに来いっつってんなら行けばいいんじゃねえの?」
なんの問題があるんだよ、と竜が言うと、由貴はグラスに刺さっているストローを指でいじりながら、どこか言いにくそうな顔をした。
竜はいつもと違う由貴の様子を眺めて、次の由貴の言葉を待っていた。
由貴はしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと顔を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!