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「あそこにいるのはお前たちの知り合いか?」
「え? あ、うん! 神社のとこで会ったんだ。由貴兄ちゃんと竜兄ちゃんっていうんだけど、せいじ兄ちゃんとこのお客さんなんだって」
「清治君とこの、ねえ……」
じろじろと見てくる拓郎に竜は眉をひそめ、由貴はにんまりと笑いかけて小さく頭を下げた。
すると、拓郎は一瞬目を見開いて驚いた顔をすると、由貴と竜のそばへと近づいてきた。
「君は……もしかして、栄治君の息子さんじゃないか?」
「え、あ、はい。そうです、岡本由貴といいます」
「やっぱりか! どうりで似てるはずだ」
由貴の言葉に拓郎は豪快に笑うと、由貴の肩をそうかそうか、と叩いてきた。
「栄治君には子どもの頃によく遊んでもらったもんだよ。いやー、東京で息子ができたとは聞いてたけど、もうこんなに大きくなっているなんてなあ。年は?」
「17です」
由貴がそう言うと、また拓郎は顔を綻ばせて笑った。それから二、三言葉を交わした後、拓郎は由貴の隣で気だるそうに立っている竜を見た。
「こっちの子は?」
「ああ、友達の藤嶋竜っていいます」
「そうか、友達ねえ……」
拓郎はじろじろと竜を爪の先から頭のてっぺんまで見てきた。竜はその不躾な視線に不機嫌そうな表情を浮かべた。
「……なんすか」
「いや、すまんな。まあ、気をつけなさい」
それじゃあ、作業に戻るか、と言って拓郎は元いた場所へと戻って行った。竜は拓郎の言葉に眉をよせた。
「気をつけるって、何をだよ」
「狐様にってことじゃね?」
隣で話を聞いていた由貴があっけらかんとそう言うと、竜は由貴を一瞥した後、溜息をついた。
「なんだよー! その溜息はー! 幸せが逃げちゃうよー!?」
「うぜえ」
由貴が一方的に絡んでくるのを、竜がめんどくさそうにあしらう、といういつものじゃれあいをしていると、いつの間にか前に来ていた壱也達が由貴と竜を見上げていた。
「ね! 由貴兄ちゃんと竜兄ちゃんも一緒に遊ぼ!」
「遊ぼうよ!」
にこにこと笑いかけてくる子ども達に由貴と竜は、顔を見合わせる。
「仕方ねえな! お兄チャン達が遊んでやるか!」
意気揚々とにんまりと子ども達に笑いかける由貴とは反対に竜はまた一つ溜息をついた。
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