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「!! ってええ!!」
「てめえ……ふざけんのもいい加減にしろよ」
竜は怒りを露に由貴の側まで来ると、思いっきり由貴の背中を蹴飛ばした。その勢いで前に転んだ由貴の背中を竜は右足で踏みつけると、しゃがんで由貴の手からホースを奪った。子ども達は竜の威圧感にやや怯えている。
「え、えへ。もーやだなあー竜ちんったら本気で怒っちゃって!」
引きつった笑みを浮かべる由貴を竜は無表情で見下ろすと、ホースの先を親指で押さえて、由貴に向けた。
「ちょ、竜! ごめ、んって!」
由貴が慌てて謝ると、竜は背中から足を外したが、ホースは由貴に向けたままである。上から容赦なくかけられる水に由貴が苦戦していると、それを見ていた子ども達が一斉に竜に飛び掛った。
「由貴兄ちゃんいじめちゃだめー!」
その横からの衝撃に竜は負けると、そのまま倒れこむ。
子ども達は転んだ竜に群がって楽しそうに笑っている。やっと水攻めの刑から解放された由貴は起き上がると、子ども達に押さえつけられている竜を見て笑った。
「うわ……すげえびしょびしょ……」
由貴は水分を含んで重たくなったシャツを脱ぐと、二回折りたたんで、ぎゅうっと手で絞った。乾いた土の上に、水がボタボタと勢いよく落ちる。シャツをもう一度開くと、水道の上にかけた。
「竜もなんやかんやで面倒見いいからなー」
由貴は、少し離れた場所で子ども達にまとわりつかれて、鬱陶しそうな顔をしながら渋々といった様子で子ども達の相手をしている竜を見た。
その後、片手で短い髪を後ろに撫で付けながら、広場を見渡した。
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