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「竜も、一緒に行かねえかなーって……」
「は? なんで俺がお前のばあちゃん家に行くんだよ。陽子さんと友香さんと三人で行けばいいじゃねえか」
「いや、お袋と姉ちゃんは行けねえんだ……」
「なんでだよ」
「あー……歓迎されてねえっつーか……なんというか……」
由貴は竜の言葉に口を濁した。
由貴の父親の岡本栄治は、由貴が2歳の時に事故で亡くなっていた。
しかし、いくら父親が亡くなったからといっても、由貴や陽子、友香がその栄治の実家に行くことはなんら問題のないことである。むしろ、祖父母にしてみれば喜ばしいことなのではないか。歓迎されないとはどういうことなのか。
竜は由貴の言葉に眉をひそめた。
由貴は顔をしかめて、どう言えばいいのか迷っているようであった。
いつものずばずばと言いたい事を言う由貴の姿とは程遠い今の姿に、竜は視線を下にずらした。
「色々あってさ、それで俺一人で行くことになったんだよ」
「…………」
「まあ、そうだよな。考えてみればなんで竜がって感じだよな、ごめーん! 今の話わす――」
「いいぜ、一緒に行ってやっても」
「……え?」
竜の突然の返事に、由貴は目を丸くした。
竜は手を伸ばして、テーブルの上にあるグラスをとるとアイスコーヒーを一口飲んだ。
「こないだの事件の時、お前には世話んなったしな」
そう言って、竜はグラスをテーブルに置くと、なんでもなかったかのようにまた雑誌を開いて読み始めた。
由貴は竜の言葉を理解し終わると、一瞬呆然とした後、口元を緩めてにんまりと弧を描くと、身を乗り出して竜のあちこち跳ねている髪を思いっきり掻き混ぜた。
「んだよー!! 出し惜しみすんなよな! このツンデレめー!!」
「やめろ!!」
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