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「あ、すいません」
「え、ああ! いいよ、いいよ。後で拭いておくから。その服も洗濯しておくよ」
竜は手を差し出した清治に、すまなそうに服を渡すと、その隣にいた由貴も清治に服を渡した。
「藤嶋君って、もっと華奢なのかと思ったら意外と筋肉ついてるんだね」
清治はバスタオルでガシガシと髪を拭いている竜を見てそう言うと、竜は「華奢」という言葉に少し顔をしかめた。それを聞いていた由貴が竜をからかうように笑うと、パシン、と竜の背中を叩いた。
「そーそー。竜って意外といい身体してんすよー! あんまりメシ食わないからガリガリと思えばそうでない。絶対こっそり筋トレとかしてますよ、コイツ」
「ははっ、そうなんだ」
清治が由貴の言葉に笑うと、竜は由貴をギロリと鋭い視線で睨んで、その頭をパシンっと叩いた。
それから部屋に戻った二人は服を着替えて、隆子と清治とともに夕食を食べた。
相変わらず食欲旺盛な由貴は口一杯に頬張り、その横で竜も久々に身体を動かしてエネルギーを使ったためか、普段よりも多く箸を動かした。
その後、由貴、竜の順番で風呂に入り、竜が風呂から上がって、部屋に入ると由貴が扇風機の前に座って、昨日竜に中途半端なところで止められた宇宙人のモノマネをひたすらやっていた。
「ワレワレハーウチュウジンダー」
「……そこの馬鹿、何やってんだ」
「お! お風呂の世界からおかえりなさいませ、ご主人様ー」
竜は由貴を呆れたような顔をして、何も言わずに自分の鞄の近くに座ると携帯を取り出して操作し始めた。
由貴はそんな竜のそっけない態度に、シカトかコノヤローと笑った。
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