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「何々? 彼女?」
「うぜえ」
「んー……なーんだ、健太かよー」
由貴はずりずりと竜の後ろに回ると、竜の手元を覗きこんだ。竜は鬱陶しそうな顔をして由貴の頭を押し返した。
由貴は竜の携帯の画面に表示されている「井上健太」の文字に、つまらなそうな顔をして後ろに下がった。しばらくぼんやりと天井を見た後、ゆっくりと立ち上がってドアの側まで歩いた。
「……どこ行くんだよ」
「あー、ちょっとばあちゃんに話があるって呼ばれててさ」
「ふうん……」
竜は由貴を振り返った後、また携帯に視線を戻した。由貴は、じゃあ行ってくっから、と言うと扉に手をかけて部屋を出て行った。
「ばあちゃん、いる?」
「ああ、由貴。入っといで」
由貴は居間に顔をひょっこりと出すと、ちゃぶ台の前に座りお茶を飲んでいた隆子がにっこりと笑った。その隣には清治が穏やかな笑みを浮かべて座っている。由貴は居間に入ると、隆子の向かい側に座った。
「えっと……話ってなに?」
由貴がそう言うと、隆子は微笑んで湯飲みを置いた。
「由貴は……今の家が楽しいかい?」
「え? あ、うん。楽しいよ。毎日うるさいけど、学校もおもしろいし、友達もいるしね」
「そう……」
「それがどうかした?」
隆子は由貴をじっと見つめたあと、にこりと笑って口を開いた。
「ここで、おばあちゃんと一緒に暮らさないかい?」
「え…………」
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