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由貴は隆子の言葉に目を見開いた。隆子はにこにこと笑い、清治は視線を下げて先ほどとは違った少し強張った顔をしていた。
隆子は由貴から視線を外すと、急に表情を変えて忌々しげに眉をひそめた。
「おばあちゃんね、由貴はここにいたほうがいいと思うの。向こうも楽しいかもしれないけど、あの女のとこだときっと満足な生活もできないでしょう?」
「あの女って……」
「18の栄治をそそのかして……きっと栄治も由貴を連れてこっちに帰ってきたかったはずなのよ。ねえ、由貴。ここはいい場所でしょう? 自然も沢山あるし、きっと由貴ならすぐに友達もできるわ。藤嶋君も向こうには由貴以外に仲がいい人いるんでしょ?」
「…………」
由貴は隆子の言葉に俯いて唇を噛み締めると、膝に置いていた手をぎゅうっと握り締めた。
隆子はそんな由貴の様子を見て、ゆっくりと由貴の側まで来ると、そっとその手に自分の手を重ねた。
「ねえ、由貴? おばあちゃんと一緒に暮らそう? おばあちゃんね、栄治がいなくなってから、寂しくて寂しくて……由貴が居てくれたらそんな寂しさも感じなくなるわ。ね?」
「ばあちゃん……」
「すんません、ちょっといいですか?」
「…りゅ、竜!?」
由貴が話そうとしたとき、竜が突然襖を開けた。突然のことに由貴、隆子、清治の三人は黙り込んで、廊下に立っている竜を見ていた。
竜は右手に持っていた携帯を掲げた。
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