10皿目 サイドメニュー揚げ芋

2/7

4382人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
 7月27日。 「今日はどうすっかなー……二日連続の村探索ってのもなー」  由貴は縁側に座って足を投げ出すと、後ろに手をつき空を眺めた。  相変わらず真っ青な空に燦々と太陽が輝いている。耳につく蝉の鳴き声。じわりと汗が額に滲む。  その隣で、暑さに弱い竜は柱に身体をもたれさせて、扇風機の前でぼんやりと天井を見上げている。 「やべー!ちょう暇なんですけどー!」 「うるせえ」 「なんだよ、竜もこの坦々と過ぎていく時間の有効な使い方について、ちょっとぐらいその無駄に回転の速い頭を貸してくれてもいいんじゃないですかね!?」 「めんどくせえ」  竜は由貴を一瞥した後、そう一言呟き、またぼんやりと天井を見上げていた。扇風機の風がふわりと竜のあちこち跳ねたブラウンの髪を揺らす。  由貴は竜のそっけない態度につまらなそうな顔をした後、ゴロンと身体を横に倒した。 「つーか、ジャンゴが恋しいよー竜ちーん。メロンソーダ……フライドポテト……ちょっと硬めのソファー……効き過ぎた冷房……やべえよ、俺らがファミレスに行かねえなんて。マジでやべえよ……俺らのアイデンテテーが崩壊する……」 「アイデンティティーな」  由貴は縁側に寝転がったまま、ファミレスー!と叫び始めた。禁断症状の初期症状である。竜がそんな由貴の様子を呆れたような顔で見ていると、ふと竜の顔の前に何かが降りてきた。  氷の沢山はいった麦茶であった。  竜はそのグラスの先を見ると、清治がにこりと笑って立っていた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4382人が本棚に入れています
本棚に追加