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「随分とバテてるみたいだね」
「……ありがとうございます」
「はい、由貴君も」
「清治さん! ありがとうございます!」
清治は竜にグラスを渡した後、寝転がっている由貴にも笑いながらグラスを差し出した。由貴は冷たい麦茶に目を輝かせると、急いで起き上がってグラスを手に取った。
一気に飲み干した由貴とは対照的に、竜はゆっくりとグラスに口をつける。ゴクリ、ゴクリ、とはっきりと浮かんだ喉仏が上下に動く。
「さっきファミレスって叫んでたけど、ファミレス行くのが好きなんだ?」
「あ、聞こえてました? そうなんすよ、いっつも放課後は竜とファミレスランデブーです」
「あはは、そうなんだ。いいね、すごく楽しそうだ」
清治は由貴の返事に笑った。竜は二人の会話を聞きながら、グラスを手に持つと、まだ残っている麦茶と氷を揺らした。
「この村にファミレスとかないんすか?」
「ファミレスか……うーん、あるといえばあるんだけど……」
「え!? マジですか! どこにあるんですか!!」
由貴は清治の言葉に目を輝かせると、身を乗り出して清治の腕を掴んだ。清治は由貴の異様なまでの食いつき様に驚きつつ、『ファミレス』までの行く道を教えた。由貴はその言葉を一言ももらさずに記憶した。無駄なことに威力を発揮する都合のいい記憶力である。
「喜べ、藤嶋隊員! ファミレスだ、オアシスが見つかったぞ!」
「うるせえ」
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