10皿目 サイドメニュー揚げ芋

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「…………」 「…………」  由貴と竜はジリジリと照りつける太陽の下、呆然と立ち尽くしていた。  二人の目の前にあるのは、木造の古びた一軒の家。この村のどこにでもありそうな歴史を感じさせる造りの一階立て。ただ他の家と違う点が一点。それは家の玄関辺りに大きな看板がかかっており、そこには達筆な字で、こう書かれていた。 『 ふぁ み れ す 』 「まあ……確かに、『ファミレス』だよな」 「認めねえ……俺は認めねえ……」  その看板を見ながら竜は妙に感心したように呟き、隣で由貴は膝をついて崩れ落ちていた。その姿は題名をつけるならば、絶望。竜は隣で燃え尽きている由貴を呆れたように見ると、その家にむかって足を進めた。 「とりあえず入ってみようぜ」 「なんだよ、なんでそんな急に積極的になんの。何がそんなに君を駆り立てるの」  珍しく妙な好奇心に駆られている竜に由貴はそう問いかけるが、竜はそのまま由貴を無視して店へと近づいていった。由貴は立ち上がると、その後を追いかけた。 「おじゃましまーす……って、この場合言わなくてもいいのか? 客だよな、俺ら」 「さあな」  由貴がドアを引いて中に入ると、その後に続いて竜も中に入っていった。  家の中はドアを開けてすぐに居間へと続いているなんとも不思議な造りをしていた。  部屋の中は想像通りの畳が敷き詰められており、3つほどのちゃぶ台が置かれて、その中央に扇風機が二台置かれていた。一台は動いていない。 「……家と変わらなくね?」 「規模がでかいけどな」  由貴と竜がきょろきょろと部屋の中を見渡していると、由貴の腰辺りを誰かが叩いた。  由貴は竜かと思い、振り返るがそこには誰もいない。由貴は恐る恐る視線を下にずらすと、そこには……。
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