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「いらっしゃい」
「ギャ、ギャアアア!! 妖怪ババア!!」
「誰が妖怪じゃ!!」
「いってえええ!!」
由貴が振り返り、視線を下にずらした先には、腰を曲げた白髪の老婆が立っていた。
由貴は思わず叫ぶと、その老婆に思いっきり脛を蹴られてしまった。竜は呆然とその様子を見ているだけであった。老婆は、ふんと鼻を鳴らすと、ずかずかと部屋の中へ入っていく。
「せっかく久しぶりの客が来たと思えば、失礼なガキか。ったく、冷やかしなら帰んな」
「ま、まじでいてえ……」
由貴は涙目になりながら脛を押さえて蹲っている。結局この後、なんとか老婆に客と認めてもらい、テーブル、もといちゃぶ台につくことができた。ちゃぶ台に置かれたメニューのようなものを二人は見ると、顔を引きつらせた。
「冷やし珈琲って、アイスコーヒーのことだよな? 揚げ芋って……フライドポテト?」
「だろうな。まあ、何芋かはわかんねえけど」
芋には色々ある。じゃが芋、さつま芋、里芋。どれが揚げられて出てくるんだ、と由貴の好奇心がうずいた。竜がちゃぶ台に頬杖をついてメニューを眺めていると、いつの間にか老婆がそばに立っていた。
「!!」
「注文は決まったかい」
竜は思わず頬から手を外して、後ろに身体を引いてしまった。
「えっとー……この、揚げ芋ってやつと炭酸水(ミドリ)ってやつと冷やし珈琲お願いね、おばちゃん」
「…………」
「おばちゃん?……え、いってええ!!」
由貴が注文するものを伝えたが、老婆は返事をせずにじとりと由貴を睨んでいる。
由貴はわけがわからず老婆を見ていると、老婆が右手に持っていたお盆で由貴の頭を叩いた。由貴は突然の襲撃に負傷した頭を抱えて蹲る。
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