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由貴は皿に並べられたぶつ切りの「揚げ芋」ことフライドポテトを指でつまんで口に運ぶ。結局、普通にじゃが芋を揚げたものであり、由貴は拍子抜けしていた。
「にゃーん……」
「んー? 猫?」
由貴が指についた塩を舐めていると、隣から聞こえてきた鳴き声にその声を方を見ると、真っ白な猫がちょこんと座り、由貴を見上げていた。物欲しそうに大きな目で見上げてくる猫に由貴はにんまりと笑うと、フライドポテトを一つつまみ、猫の前に置いた。
「おー、猫ってフライドポテト食うんだー。その身体に悪そうな塩加減がたまんねえよな」
「にゃー」
「こら! あんた、勝手に餌やるんじゃないよ」
由貴が猫の頭を撫でていると、猫はごろごろと喉を鳴らしながら手に擦りついてきた。すると、その光景を見ていた菊乃が由貴のそばへとやってくると猫を抱き上げた。
竜は菊乃から離れつつ、その光景を眺めていた。
「晩ご飯を食べなくなっちまうだろ」
「え、あ、すんません」
由貴は思わず謝った後、菊乃に抱かれた猫を見上げた。首輪をしているわけでもなく、一見野良猫のような白猫に菊乃がきちんと時間を決めて餌をやっているのか、と感心したような視線を向けていると、菊乃が猫を外に出しながら口を開いた。
「決まって朝7時、夜の6時にね、子どもが餌をやりに来るんだよ。おかげでここに住みついちまってね。まったく迷惑な話だよ」
やれやれと呆れたような迷惑そうな口調であるが、その表情は口元が緩み、小さく微笑んでいた。
「色素の薄い、かわいらしい子なんだけどね。何度言っても聞きやしない」
「……なあ、竜。その子どもって裕斗じゃね?」
「さあな」
菊乃の言葉に由貴が竜に話しかけたが、竜はそっけない返事を返し、アイスコーヒーが入ったグラスを手にとって、一口飲んだ。
カラン、とグラスに入った氷が音をたてた。
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