12皿目 ドラゴンフェロモン

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「お、重っ……」  奈緒はよろよろとした足取りで、箱を持ち上げて京一の後をついて行こうとしたが重心が前になってしまい、倒れないように背中を反らした時、バランスを崩し、後ろに倒れそうになってしまった。 「わ、わ、わ!!」  転ぶ!と奈緒は目を瞑ったが、次に訪れるはずの衝撃がなく、不思議に思って目を開けると、そこには奈緒の背中を右腕で支えている竜がいた。 「………」 「大丈夫?」 「……は、はい」  竜は奈緒を立たせると、ぼんやりと自分を見上げている奈緒を不思議そうな顔で見下ろした。  たまたま次のテントのカバーを取りに行くために、近くを通っていた竜は、奈緒が後ろに倒れそうになっていたのを見つけて、助けたのである。  基本的に非社交的な竜ではあるが、さすがに大きな荷物を抱えて倒れそうになっているのを、見てみぬふりをするのは悪いと思ったのであろう。 「竜ー。なーにやってんの? ナンパ?」 「ちげえよ」  竜と奈緒が向かい合っていると、奈緒の後ろから、清治の手伝いから戻ってきた由貴がひょっこりと顔を出した。  竜は由貴の言葉に顔を顰めると、不機嫌そうな声を出した。  由貴は奈緒の後ろから、二人の間に移動すると、弁当の入った箱を持ったまま竜をじっと見上げている奈緒を見た後、箱の中にある弁当に視線を移した。 「おー、うまそー! 俺、から揚げ弁当がいい!」  由貴は弁当を包んでいる紙をめくって中を確認すると、から揚げの入ったボリューム満天の弁当を見て、嬉しそうに声をあげた。  弁当にはから揚げと、ヘルシーさ重視の焼き魚弁当の二種類があった。
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