12皿目 ドラゴンフェロモン

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「な、これもう取っていい――……って、え!?」 「あ、あの! お名前なんて言うんですか!?」 「!!」  由貴が弁当を指差しながら、奈緒に声をかけようとしたとき、奈緒は持っていた箱を由貴に押し付けて、竜に詰め寄った。  わけがわからないうちに箱を持たされ、さすがの由貴も目を丸くして呆然としていた。竜は詰め寄ってきた奈緒に、思わず後ろに下がってしまう。 「……は?」 「あたし、浜村奈緒って言います! お名前! 教えて下さい!」 「藤嶋、竜……だけど」  奈緒の勢いに竜は、思わず自分の名前を教えてしまった。  すると、奈緒は竜の右手をおもむろに両手で握り、目を潤ませながら竜を見つめた。 「竜様……素敵なお名前ですね。あたしのことは……奈緒って呼んで下さい。やだ、あたしったら、急に呼び捨てなんて! でも、竜様になら、あたし構いません!」 「…………」  一人で盛り上がっている奈緒を、竜はまるで地球外生命体でも見たかのように怪訝な顔をして見下ろしていた。  未知との遭遇。  今、まさに竜の気持ちを表すのにこれ以上適切な言葉はないであろう。
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