12皿目 ドラゴンフェロモン

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 奈緒は由貴の持っている箱から、から揚げ弁当を一つ取ると、それを竜に押し付けた。 「これ、食べて下さい! あ、よかったら、一緒に食べませんか!? いいですよね! これ配り終わったら竜様のところに行きますね!」 「…………」  竜は渡された弁当を受け取ったが、マシンガンのように喋り続ける奈緒を呆然と見ていることしかできなかった。  奈緒は、由貴に焼き魚弁当を乱暴に押し付けると、箱を由貴の手から奪いとり、竜との昼食のために早く配り終えなければ、と急いで京一と美里の元へと戻っていった。  残された竜と由貴は、軽々と箱を両手で持ち上げて駆けて行く奈緒の後ろ姿を呆然と見ていた。 「竜フェロモンが発動したな」 「……なんだよ、それ」 「説明しよう! 竜フェロモンとは、年頃の乙女から熟女までメロメロにしてしまうという恐ろしく羨ましい藤嶋竜、かっこ16かっことじ、から発せられるフェロモンのことである」  人差し指を立てて、一気に捲くし立てた由貴を竜は冷めた目で見た後、パシンっと由貴の頭を叩いた。 「つーか、俺、この弁当食わないと駄目なわけ?」 「だろうな」 「何、この理不尽な差別」
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