2皿目 ただの緑の液体

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 7月25日。  山と山の間にある小さな村。  辺り一面青田が広がり、その間を舗装されていない道が続く。都会に目立つビルや洋風な造りの家はなく、どこかその村だけ時代に取り残されたような雰囲気に包まれていた。  道はコンクリートではなく、土がむき出しになっている。舗装されていないため、安定が悪いのか、バスは大きな車体をガタガタと揺らしながらゆっくりと進む。  車内には運転手、そして乗客は竜と由貴の二人しかいなかった。    竜は右側の二人用の座席に一人で陣取ると横向きに座って足を伸ばし、黒のキャップで顔を隠して寝ていた。由貴は反対側の二人席の窓側に座ると、ぼんやりと頬杖をついて外の風景を眺めていた。  ガタン! 「ってえ……」  大きく車体が揺れたとき、その衝撃で窓に頭をつけて寝ていた竜は頭を強か打った。  竜は身体を起すと、バスが揺れた衝撃で床に落ちてしまったキャップを取り、手で叩いて埃を落とした。  竜は一つ大きな欠伸をして、窓の外に視線をやった後、パーカーのポケットに入れていた携帯を取り出して時間を確認した。  バスに乗ってすでに2時間が経っていた。  携帯を閉じると、反対側の座席でぼんやりと外を眺めている由貴を見た。  いつもならうるさいほどに騒ぐ由貴がバスに乗ってから一言も話していない。  竜がバスに乗った瞬間に「起したらぶっとばす」と凄んで寝入ってしまったから仕方がないといえば仕方がないのだが。
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