13皿目 気が早い女と放置する男

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「竜様、おいしいですか?」 「…………」  13:00。  奈緒に捕まってしまった竜は、うんざりとした顔で弁当を食べていた。奈緒は気だるそうな竜をうっとりとした表情で見ていた。  二人から少し離れたところで子ども達に囲まれて弁当を食べていた由貴は、苦笑いを浮かべて竜を見た。 「京一くーん。君のお姉さんスゴイね」 「あ、はい。なんか、姉貴がすみません」  由貴は、隣で弁当をつついている弟の京一に声をかけると、京一は溜息をついて頭を下げた。苦労性の弟である。由貴は、気にすんなと笑いかけると、どんどん不機嫌ボルテージが上がっている竜を一瞥した 「今まで竜が言い寄られてんのはよく見てたけど、あそこまで激しいのは初めてだな。あれはすげえよ、俺でもついてけねえ」 「……すみません」  由貴は笑いながらそう言うと、自分の弁当に視線を移した。視線の先にあるのは、野菜中心のおかずに、メインの焼き魚。なんてヘルシー。由貴は、から揚げ……と呟いた後、溜息をつき、割り箸を割って魚に箸をつけようとした。 「ん?」 「……由貴兄ちゃんに、あげる。僕、あんまりお腹すいてないし」  由貴が箸をつけようとしたとき、弁当の中にコロリ、コロリとから揚げが二個入ってきた。  由貴は不思議に思い、顔をあげると、隣に座っていた裕斗が少し照れたような表情をして、そう呟いた。  由貴は一瞬目を丸くして黙った後、すぐに頬を緩めてにんまりと笑うと、裕斗の頭を撫でた。 「ほんっと裕斗可愛いな! マジで、弟に欲しい!! つーか、こんな息子が欲しい!!」  連れて帰りてえ!と言いながら、裕斗の頭をぐりぐりと撫でる由貴に裕斗は、嬉しそうに笑った。  すっかり仲良くなった由貴と裕斗は、まるで兄弟のようにじゃれていた。
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