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「はさみ使う?」
「おー、使う使う! ありがとな!」
「丁寧に使ってよね。あ、チョコで汚したりとかしないでよ」
「……君、清々しいほどに態度変わるね」
由貴は竜にはえらく甘い声を出すのに、自分には冷たい態度をとる奈緒に呆れたような顔をしつつ、はさみを受け取った。
由貴は右手ではさみを持って、袋を切ろうとしたが中々上手く切れない。
「んだよ、これ。まっすぐ切れねえ」
「とっとと切れよ」
竜がもたもたしている由貴を呆れたように見ていると、やっと切り終わった由貴は満足げな顔をした後、はさみを奈緒に返した。
由貴はさっそく袋の中に手を突っ込んでクッキーを取り出すと、口に放り込んだ。すっかり溶けてしまっているチョコレートが指についてしまう。由貴はそれを舐め取ると、嬉しそうに、にんまりと笑った。
「うまっ! ほら、裕斗も食いな」
「うん!」
由貴は裕斗に袋を差し出すと、裕斗は嬉しそうに手を伸ばしてクッキーを食べた。溶けたチョコレートでベタベタになった裕斗の手を見て由貴が笑った。
竜が由貴と裕斗の仲良さそうな様子を、ぼんやりと見ていると、またもや奈緒のマシンガントークが始まった。
「裕斗君って可愛いですよねえ」
「…………」
「前に会った裕斗君のお母さんもすっごく美人で、やっぱり綺麗な人の子供って可愛いんだなあって。あたしも裕斗君みたいな可愛い子供が欲しいなあ……竜様の子供だったら、きっとすっごおく可愛い子供なんだろうなあ……ね? 竜様……って、あれ?」
妄想の世界から戻ってきた奈緒が竜の方を見たが、またもや竜は奈緒の横から消えていた。
奈緒が辺りを見渡すと、竜は離れた場所でテントを組み立てるのを手伝っていた。
「もう、竜様ったらつれないんだから」
そんな奈緒を見上げていた由貴はポツリと呟いた。
「……ちゃららーん、竜は放置プレイの術を覚えた」
「由貴兄ちゃん、ほうちぷれいって何?」
「裕斗はまだ知らなくていいの」
「?」
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