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竜は何ごともなかったかのように、スポーツドリンクを取り出すと、プルタブに指を掛けて蓋を引き開けた。
缶に口をつけて、ゴクゴクと勢いよく飲んでいる竜に由貴は気の毒そうな視線を向けた。
「……今までさ、モテんの羨ましいって言ってたけど……竜も大変なんだな」
「黙れ」
竜は由貴の向けてくる視線に不機嫌そうに顔をしかめると、左手で由貴の頭を叩いた。
「いてえ! 叩くなよー! 暴力反対ー! 由貴ちゃんの大事な脳細胞が壊れちゃうでしょーが!!」
「元々正常な脳細胞はねえよ」
「ひでええ!!」
奈緒に付きまとわれていたストレスを発散するかのように、竜は由貴に冷たく当たった。由貴は竜の八つ当たりに文句を言いつつ、財布を取り出すと自動販売機に小銭を入れて、スイカソーダのボタンを押した。
「竜ちん、最近俺につめたくなくなくねえー」
「冷たくなくなくなくなくねえ」
「乗っかっちゃったよ! つか、わかんねえ!」
由貴は笑いながらしゃがみ込んで手を伸ばすと、勢いよく落ちてきたスイカソーダの瓶を取り出した。ひんやりと冷えた瓶が熱の篭った手のひらに馴染む。
由貴が蓋を握って左に回して開けると同時に、瓶の口から勢い良く泡が吹き出してきた。瓶を持っていた左手にピンク色の泡が次々と溢れては、落ちる。
「うわ!! え、ちょ、なんだよこれ!!」
「何やってんだよ」
「俺のせいじゃないもん!!」
由貴が慌てているのを竜は呆れたような顔で見ると、由貴は瓶を右手に持ち替えて、左手の泡を振り落とすように手首を振った。
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