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「んだよ、ツイてねえ…………お? 裕斗?」
由貴はジュースでべたつく左手から視線をあげると、そこには丁度広場を出ようとしていた裕斗がいた。
裕斗は由貴の声に振り返ると、由貴に笑いかけた。由貴も裕斗に、にんまりと笑い返すと、左手を軽く振りながら裕斗に近づいた。
「もう帰んの? 壱也達まだ残ってんのに」
「うん、『わたあめ』にえさあげないとダメだし」
「わたあめ?」
由貴は裕斗の言葉に首を傾げた。竜も裕斗の「『わたあめ』にえさをあげる」という意味不明な言葉に眉を顰めた。裕斗は不思議そうな顔をしている二人に気付くと、少し恥ずかしそうに呟いた。
「えっと、わたあめっていうのはネコの名前なんだ。真っ白でふわふわしてるんだよ」
「ほおー。もしかして、そのネコって『ふぁみれす』ってとこにいるやつ?」
「うん!」
裕斗が元気良く頷くと、由貴は、にんまりと笑って裕斗の頭を撫でた。それから、裕斗は由貴と少し話した後、二人に向かって、大きく手を振りながら広場を出て行った。
元気良く駆けて行く裕斗の背中を二人は微笑ましそうに眺めた。
「やっぱ裕斗だったかー。優しい子だよね、あの子は。うん」
「すげえネーミングセンスだけどな」
「いや、中々的確だと思うよ、俺は」
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