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18:00。
「由貴兄ちゃーん! 竜兄ちゃーん! じゃあねー!」
「おー、気をつけて帰れよ」
壱也達は由貴と竜に元気良く手を振ると、広場から出て行った。そのとき、卓也と誠太も壱也達の後ろに居たが、由貴と竜を睨むだけで手を振ることなく帰っていった。
それから、由貴と竜は拓郎に手伝いを頼まれて、パイプ椅子を運んでいると清治が声をかけてきた。
「由貴君に藤嶋君、僕は先に家に帰るけど、大丈夫かな?」
「あ、はい。大丈夫っすよ! 帰り道ならバッチリ覚えましたから!」
「そう。ならよかった」
清治は、にこりと笑うと二人に手を振って家に帰って行った。竜はぼんやりと清治の後ろ姿を見ながら、両手に2つずつ抱えているパイプ椅子を抱えなおした。
空は薄暗くなっており、太陽は頭上から姿を消していた。
ザワザワと風が木の葉を揺らす。
19:00。
太陽は姿を消し、辺りはすっかり暗くなっていた。祭りの準備は終了し、大人達も次々と帰り始めていた。
由貴と竜は並んで、ぼんやりとすっかり祭り仕様になった広場を見渡していた。
「由貴君に藤嶋君、今日はありがとう。助かったよ」
「いや、いいっすよ。大したことできてないですし」
拓郎が二人に声を掛けて来ると、由貴は、にんまりと笑ってピースサインを拓郎に向けた。竜はその隣で、小さく頭を下げる。拓郎は二人の対照的な様子に、笑うと由貴の肩を軽く叩いた。
「明日の祭りは楽しんでくれよ。じゃあ、気をつけてな」
「はい」
由貴と竜は、側を離れて行く拓郎の後ろ姿を眺めた後、自分達も広場を後にした。
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