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由貴がしどろもどろになりつつ話していると、普段なら「めんどくせえ」の一言で足蹴にしてしまいそうな竜が珍しく後押しをした。
清治は、じっと見つめてくる二人にやれやれといった様子で息をつくと、苦笑いを浮かべた。
「……わかったよ。じゃあ、一緒に広場へ行こう。広場で一旦集まることになってるんだ」
清治の言葉に由貴と竜は頷いた。そうして、三人は広場へと向かおうとしたとき、まだ岡本家の敷地内に止まったままであった車の窓から、美里が顔を覗かせた。
「清治くん、広場まで送ってくわ! 乗って」
清治と由貴達の話を聞いていた美里は、三人に車に乗るように指示した。三人は顔を見合わせると、清治は助手席に、由貴と竜は後部座席に乗り込んだ。美里は全員が乗り込んだのを確認すると、エンジンをかけて車を走らせた。
夜道を車のライトが照らす。
「美里さん、ありがとうございます」
「何言ってるの、当たり前じゃない……それに、卓也君には葵と同じ道をたどって欲しくないの……早く見つけてあげないと」
美里はそう呟くと、ハンドルを握っている手に力を込めた。清治は美里から視線を前に移して黙り込んだ。車内に重たい空気が流れる。
「……竜が自分から動くなんて珍しいんじゃねえの」
「…………」
「はい、シカトー」
竜は由貴を一瞥した後、視線を窓の外に向けた。窓の外は暗闇に包まれ、そこに何があるのか、すでにわからなくなっていた。まるで鏡のように窓に映る自分の姿を竜はジッと見つめていた。
闇が村を包む。
子どもが消えた。
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