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四つの懐中電灯の明りが道を照らす。
「あの、清治さん……子供一人帰ってこないからって村総出で探すんですか? 警察に連絡した方が良いと思うんですけど。それに子供が夜に一人でこんな森の中に行くとは思えないんですけど」
竜が前を歩く清治に声をかけると、清治は立ち止まって竜を振り返った。隣を歩いていた省吾も立ち止まると、眉を顰めて辛そうに顔を歪めた。清治は竜の顔を見ると、深刻な顔をして口を開いた。
「藤嶋君達がいる都会じゃ考えられないことかもしれないけどね……ここでは、村のことは村の皆で協力するのが当たり前なんだよ。それに、村長の話じゃ……稲荷神社の地蔵が壊されていたらしくてね……」
清治は言外に卓也が神隠しにあった可能性があることを仄めかした。竜はその言葉に黙り込むと、清治の隣にいる省吾に視線を移した。省吾は懐中電灯を握る手に力を込めて、じっと足元を見つめていた。
去年神隠しで帰らぬ人となった自分の息子ことを思い出しているのであろうか。
「……さあ、先を急ごう」
清治が小さな声で呟いて前を向くと、森に向かって足を進めた。省吾もその後に続く。
竜は二人の背中を眺めた後、前に見える鬱蒼と茂る森の入り口を見つめた。
生温い風が竜の頬を撫でる。
「竜」
「なん……――!!!」
竜は由貴に肩を叩かれ、緩慢な動作で隣に顔を向けた。竜は視線を由貴に移した瞬間、驚いたように目を見開き、肩を大きく揺らす。由貴は懐中電灯を顎の下に当てて、自分の顔をライトアップさせていた。イヒヒ、と由貴が竜の驚いた顔に満足げに笑うと、竜は由貴を鋭い視線で睨みつけ、思いっきり由貴の側頭部を叩いた。
「いってえええ!!」
「いちいちふざけてんじゃねえよ!」
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