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「卓也くーん!! いたら返事してーー!」
「卓也ーー!!」
省吾、清治、竜、由貴の順で並び、森の中へと足を進める。懐中電灯を右手に持って辺りを照らしながら、道を遮る草や木の枝を左手で避けながら歩く。
森の中は鬱蒼と草木が茂っている。竜や由貴が省吾達とはぐれてしまえば直ぐに迷い込んでしまうだろう。
「うわ! ……あっぶねえ」
由貴は頭に当たりそうになった太い枝をしゃがんで避けると、懐中電灯で辺りを照らした。
すでに森に入って一時間以上探しているが、卓也は一向に見つかる気配はない。
由貴は額に滲む汗を左手の甲で拭うと、息を吐いた。前に見えるのは暗闇の中でも明るく映える竜のブラウンの髪。四本の懐中電灯から続く光の線が森の中を行ったり来たりしている。
「こんなとこにいんのかよ……」
竜は眉を顰めながら、左手で目にかかる前髪をかきあげた。清治は竜の言葉に立ち止まると、振り返った。
「ここも昼間だと太陽の光が入って、なんでもない場所なんだけどね……そういえば、裕斗君だっけ? あの子の家も確かこの辺りだったんじゃないかな」
「……そうなんすか」
「さすがに危ないから夜は出歩いてないと思うけどね」
竜は清治の言葉に、顔をあげると辺りを見渡した。村の中心部から外れたこの場所に住んでいるとなれば、裕斗は恐らく心細い思いをしているだろう。
竜は幼い頃、家に一人でいた自分と裕斗を重ねているのか、眉間に皺を寄せて顔をしかめていた。
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