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清治はそんな竜の様子に目を細めた後、また前を向いて足を進めようとした。
ザザッ!!
「!!」
その時、清治が足を滑らせた。グラリと身体が左に傾く。暗闇のため見えにくくなっているが、清治の左側は急な下り坂になっていた。ゆっくりと清治の身体が傾いていく、右手に持っていた懐中電灯が宙を舞い、闇の中へと消えていく。
落ちる、と清治が覚悟して目を瞑った瞬間、誰かが清治の腕を取った。
「!!」
「っと!」
「ふ、藤嶋君……」
竜は左手で清治の右腕を握ると、一気に腕と身体に力を入れて清治を自分の側へと引っ張った。清治はそのまま竜の側へと尻をついてしゃがみ込むと、呆然とした顔で竜を見上げた。
竜は清治の腕から手を離すと、右手に持っていた懐中電灯で坂の下を照らした。
下に転がっていった清治の持っていた懐中電灯はすでに森の中に消えてしまい、取りに行くのは不可能であった。
竜は息をはくと、まだしゃがみ込んだまま呆然としている清治を見下ろした。
「懐中電灯は無理みたいっすね……大丈夫ですか?」
「え、ああ……ありがとう。助かったよ」
清治は、竜の言葉にハッとすると、何度か瞬きをしてから立ち上がった。竜は清治がズボンについた汚れを払っているのをぼんやりと見ていると、後から追いついてきた由貴が竜の後ろから顔を出した。
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