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「清治さん、大丈夫っすか!?」
「藤嶋君のおかげでなんとか大丈夫だよ」
清治は、にこりと笑って由貴を見た。清治がどこも怪我をしていないことを示すように腕を振ると、由貴はその様子に安心したように、にんまりと笑った。
「やー、竜! お前ってやつあ、頼りになるねえ!」
「やめろ」
由貴は竜のあちこち跳ねた髪を左手でぐしゃぐしゃと掻き混ぜた。竜は心底うざそうに、由貴の手を払った。清治はすっかり今の状況を忘れて、二人がじゃれているのを微笑ましそうに眺めた。
「そうだ、清治さんこれ使って下さい。俺は竜ので大丈夫っすから」
「いいの? ……藤嶋君、すごい嫌そうな顔してるけど……」
「ちょっとー! ちょっと、ちょっとー!」
竜は由貴の言葉に、顔を顰めて心底嫌そうな顔をすると、由貴はアニメの名前のような双子芸人のように右手を上下に振った。竜は由貴のリアクションに、さらに鬱陶しそうな表情を浮かべた。
清治が由貴に手渡された懐中電灯を握って苦笑いを浮かべた後、二人から視線を外して、先頭を進んでいた省吾の方を振り返ろうとした。その瞬間――……。
「おい! いたぞ!! 子供が下で倒れてる!!」
「!!」
森の中に省吾の声が木霊した。
清治、由貴、竜はその声に目を見開いて、顔を見合わせると声の聞こえた方へと駆けて行った。三人の走る足音が響く。
清治と竜が持っていた懐中電灯で先を照らしながら、省吾の元へと駆け寄った。省吾は側にある木に右手をついて、左手に持った懐中電灯で下を照らしていた。
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