19皿目 切り替え早くね?

2/4

4382人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
 闇に包まれた森の中。ぼんやりと照らす懐中電灯の明り。  省吾、清治、竜、由貴の四人は黙って崖の下を見ないように、視線を逸らしていた。四人の耳に届くのは、小さな虫の声と風が葉を揺らす音。  沈黙を破ったのは、清治であった。 「……とにかく、村長達に見つかったことを伝えないと」 「そうだな」  清治の言葉に省吾が頷いた。竜は省吾と清治を一瞥した後、視線を下に向けると、ジーンズのポケットに手を伸ばして携帯を取り出した。携帯の小さな明りを発するディスプレイの中には、圏外の文字がしるされていた。竜は舌打ちをして、携帯を仕舞うと、その動作を見ていた清治が苦笑いを浮かべた。 「森の中は電波がないからね、僕が村長達のところに行ってくるよ」 「一人で大丈夫っすか?」 「大丈夫だよ、この辺は幼い頃から遊んでいたからね」  由貴の言葉に清治は小さく笑いかけて、三人にこの場所に居るように言うと、その場を後にした。小さな明りが遠ざかる。  省吾、由貴、竜は暗闇の中に消えていく清治の背中をぼんやりと見ていた。その後、由貴は辺りをぐるりと見渡し、視線を下に向けると、しゃがみ込んだ。竜は由貴の隣に立つと、懐中電灯を下に向けた。  二人の視線の先には、うつ伏せに倒れている卓也の姿があった。 「ひでえな……」 「…………」  由貴は、その悲惨な光景に顔をしかめた。竜は左手をポケットに入れ、右手で懐中電灯を持ち、眉を顰めて卓也の姿を眺めていた。  卓也の小さな腕や足には、崖から落ちたときにできたと思われるすり傷が沢山ついていた。
/248ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4382人が本棚に入れています
本棚に追加