19皿目 切り替え早くね?

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 竜の言葉に省吾は右手で前髪を、くしゃりと握りしめながら辛そうに話した。由貴は省吾の話を聞いて、顔をしかめる。切々と訴えかけるように呟く省吾の言葉に、竜は眉をひそめた。  非科学的なことを信じていない竜にとって、子供が亡くなったことを神隠しのせいだと信じ込んでいる省吾の考えは理解できないことなのであろう。 「息子さん達が亡くなったのも、こんな森の奥だったんですか?」 「ああ、そうだよ」 「誰かが二人を落とした、とかそういう可能性もあるんじゃないんですか」  むしろ、神隠しなんて非現実なことよりも可能性が高いと思いますけど、と竜は淡々と話した。省吾は一瞬目を見開いた後、ゆっくりと首を横に振った。 「それはないな。村の人間がそんなことをするはずがない。稲荷神社の鳥居が傷つけられて、子供がいなくなった……神隠し以外に考えられないんだよ。よそ者である君達には理解できないことだろうけどな……狐様は確かにいらっしゃるんだ」  先ほどまでの辛そうな顔ではなく、竜の目をジッと見つめて、淡々と話す省吾の姿にはどこか異様なものがあった。竜はその言葉に、眉間の皺を深く刻んだ。  由貴は、省吾の口から出た『よそ者』という言葉に唇を噛み締めると、視線を省吾から闇に包まれた森の中へと移した。
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