20皿目 仲間外れ御免

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 数十分後、清治が村長達を連れて由貴達の元へと戻ってきた。村長達は崖の下を見下ろし、卓也の姿を確認すると、一様に「狐様だ」と呟いていた。由貴と竜は、その様子を眺めていた。  暗闇に包まれた森の中の一角、多くの男達が集まり、無数の懐中電灯の光が動いている。  崖の下にいる卓也を引き上げるため、青いビニールシートを抱えた男一人が降り、その後に続いて他にも何人かの身軽な若い男達が崖下へと降りていく。竜は右手に持っていた懐中電灯で下を照らしながら、その様子を眺めていた。  青いビニールシートに包まれた卓也が崖下から引き上げられる。生々しい子供の形をしたビニールシートには、鮮やかな青の中に所々、赤黒い汚れがついていた。  少し離れた場所に立っていた由貴は、卓也が包まれたビニールシートから視線を逸らすと、顔を顰めた。 「そ、そんな……たくやーー!!!」  森を出たところには、卓也の母親の末永由美子(すえながゆみこ)と父親の義夫(よしお)がいた。義夫は由美子の肩を抱き、自分達の前に置かれた青いビニールシートを、唇を震わせながら見ていた。  村長がそっとビニールシートを捲り、仰向けに寝かされた卓也が見えると、由美子は両手で顔を押さえて、泣き崩れた。 「卓也……」  義夫はしゃがみ込んで、由美子の肩を抱き寄せると目をきつく瞑り、涙をこぼした。卓也の前に由美子と義夫がしゃがみ込み、その周りを囲むように村の男達が立っている。由貴と竜もその中に立ち、眉を顰めて見ていた。  辺りには、由美子の悲痛な泣き声が響いていた。
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