20皿目 仲間外れ御免

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「事故って……それ、おかしくないっすか?」 「ちょ、由貴君!」  由貴の声が辺りに響いた。視線が一気に由貴へと集まる。由貴は自分に向けられた多くの視線にたじろぎつつ、言葉を続けた。清治は突然の由貴の発言に驚き、竜はポケットに両手を入れ、由貴の隣に気だるげに立っていた。 「家に帰ろうとしてた卓也があんな森の奥に、しかも一人で行くなんて……明らかに不自然っすよね? 事故って無理があると思うんですけど」  由貴の言葉に村の男達は黙り込んだ。竜は視線を辺りに巡らせると、口を開いた。 「……ここじゃ、神隠しってやつは事故扱いなんすか?」  竜は呆れたような視線を木原に向けると、木原は眉間に皺を寄せた。竜の言葉に村の男達もざわつき始めた。清治は由貴と竜の反抗的な態度に困ったように眉を下げていた。  すると、由貴と竜の前に今まで黙っていた村長の修造がやって来た。 「君は確か清治の甥っ子だったかな」 「あ、はい」 「ということは英治の息子か……まったく余計なとこまで似ておるわ」 「え?」  修造は最後の言葉を吐き捨てるように呟いた。由貴は修造の最後の言葉を聞き取れず、不思議そうな顔をした。清治は修造の言葉に顔を伏せた。 「とにかく……よそ者が知ったような口を訊くんじゃない」  修造が淡々と呟くと、その後ろにいた男達は冷めた視線を由貴と竜に向けた。修造は踵を返すと、男達に卓也を運ぶように命令した。  由貴と竜は修造の言葉と態度、そして、昼間の祭りの準備をしていた時とは明らかに違う、どこか異様な雰囲気を持った村の男達に顔をしかめた。
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