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「英治も由貴君や藤嶋君のように、神隠しや、村の村人以外を排除しようとする閉鎖的なところを嫌っていてね。よく一人で村長と言い争っていたよ。英治も……由貴君と藤嶋君のように、一緒にふざけたりしてくれる友人がいたら、少しはこの村を好きでいたのかもしれないね……」
清治は少し寂しそうに、目を伏せて話した。由貴は清治の話を聞きながら、夜空を見上げた。
由貴は幼い頃に亡くなった父親、英治の顔をはっきりと覚えていない。しかし、こうして自分と同じような気持ちで、この夜空を見上げていたのかと考えると、由貴はなんとも言えない気持ちになっていた。
竜は、隣で夜空をジッと見上げている由貴を一瞥した後、視線を辺りに廻らせた。
遠くには、ぼんやりと家の窓から零れる光が幾つか瞬いていた。周りと疎遠な都会と比べ、過剰なほどに結束が強い村。どちらがいいのか。
三人はそうして、暫く黙って歩いていると、広場の入り口に到着した。
「じゃあ、鍵閉めてくるから、ここで少し待っててくれるかな」
清治はそう言うと、広場へと消えて行った。二人は清治の背中を見送ると、竜は広場の入り口にある門にもたれ、由貴は竜の前にしゃがむと目を伏せて、生えている草を引っこ抜いた。竜は由貴に呆れたような視線を向けた。
「ガキじゃねえんだから、草で遊ぶな」
「えへへ、無邪気萌え?」
「コイツ蹴り飛ばしてえ」
「え、ちょ、いや、マジで足かまえんなって!」
由貴は、竜が自分を蹴ろうと足を引いていることに気付くと、慌てて手を十字に構えて、ガードの体勢を取った。
竜は呆れたような顔をして由貴を見下ろすと、足を元の位置に戻して、広場の入り口の方へと視線を戻した。
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