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春は馬の出産の時期である。
まだ小さい【楓香】はそれを知らない。
【楓香】はただただ子馬を見て喜んでいた。
いつもの様に放牧エリアに入る【楓香】。
ある一頭の子馬に近づいて行く。
子馬も警戒しながらだが、好奇心に負け【楓香】に跳びはねながら近づいてくる。
【楓香】と子馬はすぐに仲良くなり、一緒に走り回ったり、ねっころがったりして楽しく遊んでいた。
走り疲れて休んでいた時、子馬が母親の方に走って行ってしまった。
ご飯の時間だ。
それを知らない【楓香】は、まだ遊ぶものだと解釈してしまい、不用意に授乳中の母親に近づいてしまった。
初めて見る授乳の風景に、【楓香】は興味津々になり、周りが全く見えていなかった。
子馬に合わせて、右に行ったり、左に行ったり、回ったりしていた。
その光景を遠くから見ていた父に、ある種の不安がよぎった。
しかし、【楓香】の能力を過信していた父は不安を考えすぎ程度とあしらい、仕事に戻ってしまった。
父が見た元気な【楓香】はこれが最後であった。
授乳中に人間が近づいていることで、カリカリしだした母馬に【楓香】は気付かない。
ましてや、子供を産んだばかりの母馬は警戒心が強く、かなりナーバスになっている。
【楓香】はそれを知らない。
知らないから近づき、母馬の前で子馬にちょっかいを出していた。
そして【楓香】は子馬を追いかけて母馬の後に行ってしまった。
……ドカッ‼………バタッ………
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