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雷鳴が鳴り響く中産まれた『彼』は何事もなくスクスク育っていた。
毎日牧場のはじからはじまで走り回り、狐やリスを見つけては追い掛け回し、まさにやんちゃ盛りである。
しかしそんな『彼』にも別れの時が近づく…
競走馬として、最初の試練、母馬…そして住み慣れた牧場との別れである。
競走馬は育成の為、産まれてしばらくすると母親や住み慣れた牧場から離されてしまう。
その時の子馬は、母馬を呼ぶ為鳴き続ける。
もちろん『彼』も例外ではない。
ここの牧場長【一馬〈カズマ〉】に運搬車に乗せられる。
『彼』は運搬車の中から母を呼ぶ為鳴き続けた。
母の姿が見えなくなっても鳴き続けた。
しばらくして育成牧場にやってきた『彼』。
初めて見る風景に警戒してなかなか運搬車から降りられない『彼』
【一馬】はため息をつき言う。
『こうゆう時は賢さがあだになるな。』
その言葉を聞いていたのか、『彼』はしばらく躊躇ったあと、警戒しながらも運搬車を降りた。
そして案の定、いるはずのない母馬を捜す。
1時間ほど牧場内を捜した『彼』は諦めたように鳴くのをやめ、何かを振り払うように走り回った。
30分程走り回った『彼』はもう母馬の事は頭にない。
子馬というのはそうゆうものである。
最初は警戒していても、好奇心に負け遊び始める。
遊び始めると楽しさのあまり母馬の事、住み慣れた牧場の事などケロッと忘れてしまう。
今の『彼』の頭の中は
【母<遊び】なのだ。
『彼』の元気にかかれば、他の縮こまっている子馬も一瞬で【母<遊び】になる。
それを見て【一馬】は言う。
《これなら安心して『彼』を置いていける。》
《牧場長、うちの馬をよろしく‼》
こうして仲間もでき、新しい家で楽しく過ごしていく『彼』だったが、ある馬達との出会いにより、楽しかった生活が絶望にかわる…
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