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一方、違う地域の厩舎でもこの日『彼』に関わるいくつかの誕生があった。
その一つが、『この子』である。
この日産まれた『この子』は、なんと!『彼』と同日、同時刻に産まれた馬なのだ。
『彼』と同じように雨風が強い悪天候の中お産状態になった。
が、天命によるものなのか、産まれる時は『彼』とは逆に、雨も、雷も、風すらも止み、分厚い黒い雲に覆われていたはずの月が、雲を切り裂いくように光を放ち、その月明かりが産まれた彼をピンポイント照らした。
月明かりに照らされたまますぐに身体を起こし、胸を張り、四脚に力を込め『この子』は鳴いた。
担当の厩務員は、目の前でおきたあまりの偶然の重なり合わせに、思わず《奇跡だ》と言った。
そして『この子』が後に『彼』の最大最強のライバルの一角として『彼』の前に立ちはだかる事になる…
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