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『彼』に関するいくつかの誕生の最後は『彼女』である。
『彼女』も四頭同様、奇跡の誕生をした。
『彼女』の母は栗毛、父は青鹿毛と血統上はいたって普通の毛色の『彼女』が産まれるはずだった…
『彼女』は逆子だった。自力では産まれてこれず、帝王切開により産まれた子だったのた。
帝王切開で『彼女』を取り上げた獣医と厩務員は、『彼女』を見て、目を真ん丸くして驚愕した。
なんと普通の毛色が産まれるはずなのに、誕生した『彼女』は雪原を思わせるような純白の白馬であった。
獣医は
《ありえ…ない》
厩務員は
《…奇跡…だ…》
二人はあまりにも不思議な出来事に言葉が上手く出ない。
時間が経っても彼等は状況を把握し、理解することができなかった。
そうこうするうちに『彼女』は立ち上がった。
気が動転している彼等にもそれは理解できた。
しかし、《何か違和感がある…》彼等は不可解な感覚に襲われた。
だが、毛色のインパクトが強すぎて、その違和感がなんなのか理解できなかった。
むしろ、その違和感を毛色だと思っていた。
無事に『彼女』も産まれ彼女の母親も無事縫合が終わり、一段落ついた彼等がその場を立ち去ろうとしたとき、近くで出産を見ていた厩務員の娘が蒼白な顔で絶望的な一言を言った。
《『彼女』脚が曲がってる》
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