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…獣医と厩務員は即座にさっきまで感じていた違和感がそれであることに気付く。
そして、確かめてみると『彼女』の後ろ脚は曲がっていた。
それもひどい曲がり方をしている。
『彼女』は白毛という奇跡の毛色を身に纏っていたが、その反面サラブレッドには絶望的な脚曲がりの持病も身に纏ってしまったのだ。
『彼女』の脚の曲がりに気付いて言葉を失っていた彼等は、ある決断を迫られる。
脚の切断である。
後ろ脚があんなに、しかも両方曲がっている。
『彼女』は身体のバランスが悪く、切断しなければ命に関わる事態なのだ。
幸いな事に『彼女』は牝馬である。
たとえ【競走馬】として走れなくても【母親】としてやっていくことができる。
若い命を絶やさない為にも彼等は切断の決意をした。
手術の準備をする彼等を見て母親は自分の娘の置かれている立場を理解した。
悲しみから鳴こうとしたが、娘にかせられた運命を受け入れるかのように、口を紡ぎ、ただじっと一点を見つめていた。
獣医・厩務員・母親、やむおえない状況を受け入れようとする中、『彼女』の目は光を失っていなかった。
『彼女』も自分の置かれている状況は理解していた。前脚に体重を移動させて後ろ脚を庇っていた。
『彼女』はまだ競走馬になることを諦めていなかった。
それを察した厩務員の娘が一言…
《私が治す!》
その言葉に皆驚愕した。
そして、獣医は間髪入れずに言葉を返した。
《確かにここまで曲がった脚でも治して競走馬にすることはできる。》
《しかしそれには有り得ないほどの激痛に耐えなければならない…無理だ…》
獣医は今までに何頭かひどく脚の曲がった馬を治そうとしたことがあった。
しかし、一頭も最後まで激痛を伴う治療に耐えれた馬はいなかった。
それを知っている獣医は断固として反対した。
そして、厩務員の娘まで諦めの気持ちになった…その時、『彼女』は曲がった脚を引きずりながら歩き、厩務員の娘の側に行き、娘に向かって鳴いた。
《『彼女』は競走馬になりたがってる。》
獣医達はすぐさまそれを理解し、治療する準備を始めた…
それと同時に厩務員の娘はある決断をする…
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