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ある日、コンクリートの片隅に一輪の花を見つけた。
長い、長い冬を乗り超えて必死に芽を出す植物達。
照りつける太陽の光を浴びて、《子供達》はすくすくと成長していった。
人間もまた同じだと思う。
少しずつ僕達も大人になってゆくんだね。
新しい仲間と出会い、そして別れを繰り返しながら…。
学校帰りの生徒達が横切っていく。賑やかに言葉の花を咲かせていた。
とめどもなく流れてくる菜の花の香りに心奪われながら…。
いつしか過ぎ去ったあの頃を思い出して。
『どうしたの?』
君はきょとんと僕の顔を覗き込んだ。
僕は微笑んで、
『何でもないよ。』って答えた。
彼女は不思議そうに僕を見つめていた。
僕の隣には君がいて、君の隣には僕がいて…。
変わらないこの関係を何度も願った。
美しく儚い想い。
春が来る度、《桜》はまた咲くんだね…
君と見たあの景色は…
僕の心の中に閉まっておくよ…
風に吹かれて、舞い散る桜吹雪に…
君の面影をどんなに探しても…
ふたりはもう戻らない…
桜はいつまでも優しく僕達を見守っていた。
残された寿命を知っていたかの様に…。
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