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彼女に告白すると決めてから、あれから随分と経ってしまった。
告白出来るチャンスは何度かあった。
でも、その度に心の中でブレーキをかける自分がいた。
『告白して振られたら、この先やっていけねぇよ』と、反対の悪魔。
先輩、後輩の距離。同じ職場環境。
相手の気持ち。
全てがプレッシャーとなって自分に返ってきた。
『情けねぇなぁ…。男なら当たって砕けろ!』
と、賛成の天使。
どちらにしても決着をつけなければならなかった。このままズルズルと友達のままの関係も嫌だった。
『このままでは終われない!』
意を決心して、仕事が終わった夜だった。
押しつぶされそうな緊張と期待をしながら彼女にメールで気持ちを伝えた。
告白するのは生まれて初めてだった。
【君が好きです。付き合って下さい。】そんな内容だった。正直、相手にもよるが、こんなメールを貰っても、女の子は大抵嬉しがらない。ほとんどは失敗するに違いない。だけど、当時の僕にはこれくらいが精一杯だったんだ。臭い台詞も綺麗な台詞も使えなかった。ただひとつだけ。君に『好きだ』って伝えたかった…。メールを送って数分後…
連絡なし。
時計ばかり気にした。
一秒、一秒がとても長く、そして、不安ばかりが頭をよぎった。
夏始めの時期だったせいか、汗が額から流れ、落ちていく。
握り締めていた携帯は手の汗でびしょ濡れになっていた。
数時間後…
緊張の糸が切れ始めた瞬間、携帯が鳴った!
恐る恐る、返信内容を確認する自分。
【ありがとう】の文字だけ。
『振られた…。』
『終わった…。』
と、思った。
頭真っ白とはまさにこの事を言うんだろうな…。
呆然として身動きが取れない自分がいた。
あれから何分経っただろう…。
止まっていた時計も息を吹き返した様に少しずつ動き始めた。
ようやく現実に戻り始めた頃、絶望感が一気に押し寄せてきた。
『振られたんだ…。』
さっきから何度も何度も心の中でリフレインしている。
時計は23時を回っていた。
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