告白

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時折、部屋中に流れてくる蒸し暑い風が、『もうすぐ夏が来るよ』って知らせている様だった。 辺りはいつもと変わらず、静けさを保っている。 ただひとつだけ、違っていたのは、僕は彼女に振られたって事だ。 テレビはいつの間にかニュースに変わっていた。 テレビの中ではニュースキャスターが渡された原稿を忠実に読み上げている。 しばらくして、僕はこの事実をまっすぐ受け止めた。 メールを何度も読み返しては、彼女を諦める努力をした。 『好きだって気持ちは変わらないのに。』 自問自答をしながら時間は過ぎ去っていった。 どれくらいの時間が経っただろう。 携帯が突然鳴った。 『ピッピ、ピッピ』彼女からのメールだった。 『こんな遅くになんだろう?』と、不思議に思った。 【宜しくお願いします。】と打たれていた。 『…。…。…!!!】 一体何が起こったのか分からなかった。 彼女からの問いに答えをどんなに探しても見つからなかった。 気付けば僕は彼女に電話していたんだ。 僕『もしもし?』 彼女『はい。』 僕『遅くにごめんね。メール見たけど、よく分からなかった。』 彼女『???』 僕『宜しくお願いしますってどう言う意味?』 彼女『えっ?…付き合うって事?』 僕『 うん。俺と付き合ってもいいって事?』 彼女『…うん。』 彼女からの答えにようやく事の重大さが分かった。 どうやら振られたと思っていたのは僕の勘違いだった。 彼女の声を聞いたせいか、付き合う事の嬉しさよりも安心感の方が僕を支配していたんだ。 心の底から君を好きだって実感できた。 『君が大好きだよ。』 電話越しに君を感じながら、僕は初めて、自分の声で告白した。 メールで伝えるよりも、素直になれた気がした。 言葉で表せないけど、優しい気持ち。 僕が無くしていた《大切なもの》…。 『ありがとう。ふたりで幸せになろうね!』 無邪気に笑った君の声が愛おしかった。『ありがとう。』 心から素直に言えた。 僕は君に手を差し伸べたんだ… 君の手は暖かく、そして優しかった… どんなに距離が離れていても… 僕は君をずっと、ずっと近くに感じていたんだ。
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