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『ミーン、ミーン、チチチ…』
蝉の鳴き声が仕切りなしに聞こえ始めた頃、僕達は付き合い始めた。
同じ職場で顔を合わせる度、気付けば僕は君の姿を追う様になっていった。
片思いから始まった恋。
何度も君に声をかけようとして、飲み込んだあの日々。
今では、それが良い思い出となってしまった。
『ありがとうございました!』
笑顔で見送る君の姿、大好きだったよ…。
仕事が終わった夜は一緒に帰った。
幸いにも同じ方向だったのがせめてもの救いだった。
ふたりで決めたデートコース。
ふたりだけの秘密。
『手、繋いでもいい?』
初めて君と手を繋いだ時、僕は緊張で声が上擦ってしまった。
『手、汗ばんでるけど平気?』
君がおどけて笑うから…君をどんどん好きになっていった。
街中を行き交うカップル。
仲間と飲んだくれてるサラリーマン。
パチンコ屋の賑やかな音。
東京の夜は一層活気で満ち溢れていた。
君の手は小さくて、僕はずっと、ずっと、握り締めていたんだ。
この先も決してふたりが離れないように…。
ふたりで歩いたあの道は…
今でもまだ残っているのかな…
僕を包み込んでくれた、君の温もり…
ふたりだけの世界が広がったんだ…
振り向けば、いつも笑顔の君がいて…
ふたりは、ずっと、ずっと、優しいKissをしていた。
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