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ふたりが付き合い始めて、半年が過ぎ様としている。
季節は夏から秋、そして冬へと変わっていった。
東京の冬は雪が降らない。
ビルとビルとの間を流れる冷たい風だけが、人々を通っては去っていった。
クリスマスが近いせいか辺りはイルミネーションやイベントで盛り上がっている。
しばらくして、賑やかな声や音楽が遠ざかった頃、僕はすぐ近くの公園で足を止めた。
そこには、吹き荒れる東京の寒さを必死に堪え、この冬を乗り切ろうとするホームレスの姿があった。
《東京》の表と裏の世界。
薄汚れていく現実。何かを得る為に何かを捨てなければならないのか…。
理想はあまりにも高すぎて、下を見れば切りがない。
僕は初めて、大人の階段を一歩、一歩登っている気がした。
君と過ごした半年。ふたりの世界は夢のように、輝いていたんだ。
君といた時間だけが、僕を現実から救ってくれた。
心からありがとう。
約束の場所へ、君を迎えに行った。
笑顔で手を振る君の姿があった。
僕はずっと、ずっと故郷の雪を思い出していた。
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