..Ⅳ.. あの日、あの時の記憶

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初めて彼氏が出来たのは、14歳。私が中学3年生の時だった。 相手は、受験の為に通ってた塾で知り合った、1コ下の男のコ。「和矢クン」。 勉強も出来て。 陸上部の部長をしてて。 照れ屋で。 あまり笑わないし。 喋らないけど。 何に対しても真面目に全力で取り組む姿に惹かれて。 メールするようになって。 ...告白されて付き合った。 でも。 私が高校に合格して、暫くたった頃から。 お互い忙しくて連絡を取り合わなくなっていった。 それでも私は好きだって想い続けてたのに。 久し振りに会った塾の先生からこんなコトを言われた。 「神谷、お前ホントに和矢と付き合ってんの?」 「はぁ...一応。何かあんまり連絡取ってないですけど」 先生はポリポリと頭を掻きながら。 言いにくそうに口を開いた。 「...あのさ、凄く言い辛いんだけど...和矢はもう付き合ってるとは思ってないみたいだよ...」 「...あぁ、やっぱり。和クンに直接聞いたんですか?」 「この前会ったから聞いてみたんだよ。そしたら、“別れたかったけど、直接言えなかったから連絡取らないようにしてた”って言ってて...」 ずっと連絡を取っていなかったコトもあって。 半ば諦めかけてた私の心の中には、「悲しみ」よりも「怒り」の感情が沸々と沸いていた。 「私もそろそろ潮時かなぁって思ってたんで後でメールしてみます。わざわざありがとうございました」 淡々とそう言って塾を後にすると。 メール作成画面を開いた。 “久し振りだね、元気?何かさ、最近連絡とかあんまり取ってないしお互い忙しくて全然会えないし、それに私好きな人出来たからもう別れよ。今までありがとね。” 一方的にメールを送って。 数分後、和クンからの返事。 “元気だよ。わかった。何かゴメン。こっちこそ色々ありがと。” 返事はしなかった。 和クンからのメールも着信履歴も電話帳も、ありとあらゆる和クンの痕跡は消した。 「好きな人が出来た」っていうのは作った理由だったけど。 大した想い出もなかった。 約1年の初めての「彼氏」は、呆気なく終わりを迎えた。
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