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初めて叶多に出会ったあの日から約1ヶ月。
私と結衣はまた「Pluie」に来ていた。
「Pluie」はそう、叶多と出会ったあのお店の名前。
もう6月も半ば。
ジメジメとして湿気に弱い私は若干へばってた。
この日は朝から雨が降っていて。
結衣はダルそうにしていたけど。
雨が好きな私は、へばりながらもうきうき気分だった。
雨に濡れて潤った街って、何だか洗練されたような感じがして好き。
汚くなった自分自身を洗い流してくれるような気がする。
だから土砂降りじゃない限り傘は持ち歩かない。
結衣もそれを知っているから、いつもの小さな折り畳み傘じゃなく、大きめの傘をわざわざ持ってきてくれていた。
結衣の傘にいれてもらって、2人で肩を並べて歩きながら。
1ヶ月前、初めて「Pluie」に行った日のコトを思い返していた。
1ヶ月前のあの日。
結局私は、元々決めていた人を指名して担当にした。
そもそもあの日「Pluie」に行ったのは話をしてみたい人がいたから。
そう言い聞かせて、心の中にいる叶多を消し去った。
あのまま叶多を指名してしまったら。
忘れていた感情を思い出すコトになる...。
確信があった。
「もう人を好きになるコトなんてしない」
精一杯の規制だった。
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